運命愛
『人間の偉大さを言い表すための私の慣用の言葉は運命愛である。 何ごとも、それがいまあるあり方とは違ったあり方であれと思わぬこと、 未来に対しても、過去に対しても、永遠全体にわたってけっして。 必然的なことを耐え忍ぶだけでない、それを隠蔽もしないのだ、──あらゆる理想主義は必然的なことを隠し立てしている虚偽だ──、 そうではなくて、必然的なことを愛すること…』
この人を見よ
さすがニーチェ、難解な文章ですね。
戦う哲学家、中島義道先生のお力をお借りします。
『ニーチェの不可解きわまる思想のうち、私がごく最近了解し始めたことがある。 それは、「何ごとも起こったことを肯定せよ。一度起こったことはそれを永遠回繰り返すことを肯定せよ」 という「運命愛」と名付けられている思想である。 つまり、私に起こったことすべてを「私の意志がもたらしたもの」として捉えなおすことだ。 私が他人から嫌われ、排除され孤独に陥っているとしよう。 「運命愛」とは、こうした場合もそもそも俺が悪いんだからと泣き寝入りする態度ではない。 何もかも自分のせいにして安堵する怠惰な態度ではない。 この運命は自分が選び取ったものだと──無理矢理にでも──考えてみる。 この意味で、孤独を完全に肯定することだ。 すると、孤独の苦痛ははるかに軽減する。 やせ我慢ではない。 こうした状況はまさに自分が望んだのだ、思ってみることである。』
さらに
『今の状態を百パーセント肯定しなさい。 あなたの孤独は、あなた自身が選びとったものだと認めなさい。 そして、その(表面的な)不幸を利用し尽くしなさい。 それは、とても「よい」状況になりうることを信じなさい。 心からこう言いたい。』
そして
『他人に押しつけられたものが苦痛を与えるとき、我々は脆く崩れてしまう。 だが、自分が選びとったものがたとえ自分に苦痛を与えるとしても、耐えられるのである。』
孤独について~生きるのが困難な人へ~
私自身、ニーチェの運命愛を知り、活かすことで生きることが楽になりました。 生きづらさから、生き強さに変わった気がします。自分の運命を肯定することで、自己肯定ができ自己効力感が増すのだと思います。 今回はこれ以上書くと、ニーチェと中島先生の文書を汚すことになりそうなのでやめときます。
- このひとを見よ ニーチェ著 手塚富雄訳 岩波書店
- 孤独について~生きるのが困難な人へ~ 中島義道 文春文庫