二子玉川心理ケースワークオフィス

セルフ・リラクゼーション 基礎編

夕日とコップ

今回は基礎編と実践編の2回構成でお伝えしたいと思います。
さて、リラクゼーションとは直訳すると「くつろぐ」「緩めること」です。
生理学的にリラクゼーションとは「副交感神経が優位になっている状態」を示します。
人の神経の分類の仕方のひとつに体性神経と自律神経に分けられます。 意識でコントロール出来るのが体性神経(随意神経系)、意識ではコントロール出来ないのが自律神経(不随意神経系)です。

自律神経には交感神経と副交感神経がある

自律神経は交感神経と副交感神経の2つに別れます。 車で例えると、アクセルが交感神経、ブレーキが副交感神経にあたります。 交感神経の機能は闘争fightor逃走flightに総称されるように身体的刺激や侵害刺激、恐怖と言ったストレス状況に現れます。 そのため、交感神経が働くと、心拍数は高まり、呼吸は速くなり、消化管、皮膚、四肢の血液量は減少し、筋肉は緊張し、発汗が起きます。

以上の反応は、私たちが大自然で生き抜くための本能です。 目の前に猛獣が現れたり、火山の噴火や洪水に対し、闘争逃走かを行うための機能なのです。 熟考せずに闘争逃走か、を判断することが出来ます。 心拍と呼吸を高めることで素早い行動が可能になります。 皮膚や四肢の血液量を減らすことで出血を抑え、また、肺・心臓・脳に血液を集め効果的に循環させます。 手足の発汗は武器を持つ手、逃げるときに足が滑らないような働きもあります。
また、気温・気圧・湿度といった外的変化や騒音や振動に対しても常に自律神経によりコントロールされています。

交感神経が働くとき

現代社会においても、交感神経は災害や事故などから命を守っています。しかし、交感神経が優位になる状態はそれだけではありません。
例えば、重要な商談、プレゼンテーション、学会発表、会議、新規の営業などなど。日常においては、上司に叱責された時、同僚に不快な事を言われた時、意思疎通のうまくいかないと部下との関係。その他、時間に追われている時の車の渋滞に交通機関の遅延。同僚、恋人、友人、家族との対立。はたまた、ネット上のSNSなどでのいわれなき誹謗中傷。DV、ハラスメントは災害や事故に匹敵します。
 このように日頃から私達は交感神経が優位になる機会にさらされています。そのために私たちの交感神経は常に働きやすく、かつ敏感になっています。ややもすると交感神経が常に優位な状態となりがちなのです。

交感神経と扁桃体

人間の脳にはもう一つの優れた機能があります。 しかし、それが現代社会ではマイナスに働く場合があります。 それは、一度経験した災害や事故を忘れないように強く記憶させる機能です。 その働きを担っているのが海馬と扁桃体です。
今、目の前に起きていること(または変化)→扁桃体が海馬に解析を求める→海馬が情動にまつわる記憶を検索し不快(快)を報告する→極めて高い不快(快)であることが判明すると、 扁桃体が海馬にもっと思い出せと命じる→海馬から送られる情報量により扁桃体は交感神経を働かせる。
以上のメカニズムにより人間はとっさの行動を取ることができるのです。

さて、上記の目の前に起きていることに、色んな出来事を当てはめていきましょう。
重要な商談、プレゼンテーション、学会発表、会議、新規の営業などなど。日常においては、上司に叱責された時、同僚に不快な事を言われた時、意思疎通のうまくいかないと部下との関係。その他、時間に追われている時の車の渋滞に交通機関の遅延。同僚、恋人、友人、家族との対立等々
いかがでしょうか。私たちは交感神経が刺激され優位になる状態に晒され続けているのです。

副交感神経を優位にするためには

適度なストレスであれば交感神経が働いても、直後に副交感神経が働きバランスを取ってくれます。 刺激が強くなると副交感神経の働きが追いつかず交感神経が優位な状態が継続するようになります。
また、自律神経が過敏な人がいます。子供の頃から、車に酔いやすい方、気圧差に敏感な方。 目、耳、鼻、舌が敏感な方もそうです。このような方も、交感神経が優位になりやすいです。
さてリラクゼーションとは、何かを再確認しましょう。 「副交感神経が優位になっている状態」です。 扁桃体や不随意の自律神経は交感神経を酷使することで交感神経優位型人間となりやすいのです。 故に副交感神経を意図的に優位にさせる必要があります。

その鍵は、交感神経が優位になっている時の生理的変化です。

  1. 横隔膜が緊張し、呼吸が速くなっている(胸式呼吸)。
  2. 脈が速く打っている。
  3. 四肢に血流が少なくなり手が冷たく、発汗している。
  4. 筋肉が緊張している。
  5. 腹部が冷えている。
  6. 額を中心に頭部が熱い。
  7. 交感神経が優位になりすぎていると扁桃体が前頭前野を抑えてIQが低下します。(思考は、不安と恐怖に占められます)

ということは、この逆の状態になると

  1. 横隔膜がゆったりとした呼吸をすること(腹式呼吸)。
  2. 脈がゆったりと打っている。
  3. 四肢に血流が多く流れ手が温かく、乾いている。
  4. 筋肉が弛緩している。
  5. 腹部が温かい。
  6. 額を中心に頭部が涼しい。
  7. 前頭前野が扁桃体を抑えてIQがあがる。(思考は、前向きで幸福感が広がります)

以上の状態を目指すことで副交感神経は優位になります。この状態がリラクゼーションです。次回は副交感神経を優位にするための実践編です。

*扁桃体も海馬も大脳辺縁系(だいのうへんえんけい)のひとつです。その他に帯状回、海馬傍回、側坐核があり複雑に本能、自律神経、記憶を司っています。今回は扁桃体と海馬にスポットをあてました。