ネバーエンディング・ナラティブ
今回はナラティブ・アプローチのお話です。
ナラティブ・アプローチは
- 自身のネガティヴな物語りをポジティブな物語りに再構築していきます。
- 「人が問題ではなく、問題が問題である」とアプローチします。
- 相手に敬意を払いつつ非難することないアプローチを行います。
ストーリーとナラティブの違い
ストーリーは起承転結のある完結した物語りで、主人公と登場人物で話が展開されます。
ナラティブは語り手が主人公で自らの選択で変わり、常に現在進行形のネバーエンディングです。
ナラティブには2つあります
- ネガティヴな思い込みより作られた物語り(ドミナント・ストーリー)
- ポジティブな選択によって再構築された物語り(オルタナティブ・ストーリー)です。
しばし、創作SFショートストーリーの世界へご招待
銀河系の遠く彼方に
全ての願いが叶うソース星という星がありました。
ソース星のインナとチャイルは銀河系内にあるネガティヴエンという星の危機を助けるためにやってきました。
ネガティヴエンは、願いが叶うことが困難になる星です。
願いを持つと不安と恐怖に包まれます。
徐々に願いは弱まり最後には忘れていき、ネガティヴエンという星そのものが暗闇へと向かいました。
ネガティヴエンでのインナとチャイルは、この星の危機を救うことに自信を無くし、次第にこの星に来た目的も失い始めました。
自信のなさから生じる不安と恐怖を自分と相手の問題と捉え、日が経つに連れて2人は些細なことで口論になります。
自分の自信のなさを相手にぶつけることで傷つけ合い、やがて2人は離ればなれになってしまいました。
孤独になった苦しみの中でインナは気づきます。
チャイルと共にこの星を救うことが真の願いであったと、そしてその願いが叶わなくなることで強い不安が起きていたことを知るのです。
インナは「不安は願いの裏返し」であり、「不安の強さは願いへの強さ」である事を理解します。
人は願いが叶わないことを幾度か経験すると「失敗」に執着するのです。
「私はダメな人間だ」「どうせ、私なんて」と、ネガティヴなストーリーを作ります。
インナは「不安・恐怖」の思い込みによって作られたネガティヴなストーリーをポジティブなストーリーに置き換えることに挑戦しました。
「願いが叶わないのは私やあなたのせいではないこと、この星は願いが叶うまでに時間がかかること、だから諦める必要はない」と、ストーリーは置き換えたのです。
すると、不思議なことに遠く離れた場所にいたチャイルとインナは強い力で引き戻されるように再会を果たします。2人は不思議にも同じ考えに到達していたのです。
2人はネガティヴな物語りをポジティブな物語りに再構築出来ることをネガティヴエンの人々に伝えます。
これこそがネガティヴエンを危機から救い出せる鍵だったのです。
危機を脱したネガティヴエンは新しくポジティブエンという星に変わり、多くの人々が思い込みという鎖から解放されました。
インナとチャイルは新たな「自分と相手への信頼」を得てソース星に帰っていきました。
Fin
ドミナントからオルタナティブへ
インナとチャイルの話しでは、ドミナント・ストーリーは
「うまくいかないのは私の能力が低いからだ、だから失敗ばかり、いつも私が足を引っ張っている。
チャイルも私に呆れている。不安はより一層強くなるばかりでお互いに傷つけ合うだけ、距離を置いたが良いに違いない」
それをオルタナティブ・ストーリーに変えたものが
「うまくいかないのは、この星は願いが叶うまでに時間がかかることが理由で、確実に叶う方向に向かっている。
願う気持ちはとても強く、私もあなたもやるべきことをきちんとやっているから、願いが叶うのを楽しみに待てる」
問題を外在化する
オルタナティブ・ストーリーに置き換えるためのコツは「問題の外在化」
「人が問題ではなく、問題が問題である」に則ります。
「私は怠け者です」↓
「問題があなたの行動までに影響を及ぼしているのですね」
「私は鬱です」↓
「鬱が外に出ることを難しくしているのですね」
「私は心配性です」↓
「心配性はあなたの新しい試みにストップをかけているのですね」
名前をつける
「怠け者の私」「鬱の私」「心配性の私」に名前をつけましょう。創作SFでは星の名前を「ポジティブエン」と「ネガティヴエン」と名づけました。名前をつけることで外在化しやすくなります。例えば、
怠け者の私 | → | ナマケー |
鬱の私 | → | ウッチー |
心配性の私 | → | ワリアー |
このように問題な事柄に名前をつけることはトラウマ記憶によって優位になる扁桃体の働きを抑えることでポジティブに物事を捉える力がつきます。
ユニークな結果を見つける
思い込みによって作られた物語り(ドミナント・ストーリー)の中にも、時折その枠からはみ出しているストーリーがあります。
- 願いが叶わないのではなく、時間がかかるが叶う。
- 鬱がひどいけど、友人に電話をかけた。
- いつも先延ばしするが、新作ゲームはすぐに注文する。
- 不安が強い時ほど、それを強く望んでいる時だった。
ネバーエンディング・ナラティブへ
大きな不安の中にこそ、本当の願いがあります。
不安によって作られているドミナントストーリーを真の願いに繋がるオルタナティブストーリー(ポジティブな選択により再構築された物語り)へ変えていきましょう。
皆様のネバーエンディング・ナラティブの旅、お供いたします。
ご来所お待ちしています。
- ナラティブ・プラクティス マイケル・ホワイト著 金剛出版
- ナラティブ・セラピーって何? アリス・モーガン著 金剛出版
- ナラティブ・アプローチの理論から実践まで G・モンク/J・ウィンズレイド/K・クロケット/D・エプストン著 北大路書房