2026/1/11
その生きづらさの根っこに、複雑性PTSDが隠れているかもしれません。
4つの専門的アプローチで、回復への道筋を支えます。
「なぜか人間関係がうまくいかない」「いつも自分を責めてしまう」「感情のコントロールが難しい」「漠然とした不安や空虚感がある」――そんな生きづらさを抱えていませんか?
カウンセリングや心療内科を訪れても、「うつ」や「不安障害」と診断され、なかなか根本的な改善に至らない。そんな経験をお持ちの方も多いかもしれません。
実は、その生きづらさの根っこに、複雑性PTSDという状態が隠れている可能性があります。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)というと、大きな事故や災害、犯罪被害といった「明らかなトラウマ体験」を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、複雑性PTSDは少し違います。
複雑性PTSDは、長期間にわたる繰り返しのトラウマ体験によって生じます。たとえば、幼少期からの虐待やネグレクト、長期間のDVやハラスメント、抑圧的な環境での育ち、慢性的な否定や批判にさらされる経験などです。
こうした体験は、一つ一つは「大したことない」と思えても、積み重なることで深い傷となり、「自己感覚」や「人間関係のパターン」、「感情の調整能力」に影響を及ぼします。
通常のPTSDの症状(フラッシュバック、回避、過覚醒など)に加えて、複雑性PTSDには以下の特徴があります。
これは非常に重要な視点です。トラウマは単なる「気持ちの問題」や「考え方の問題」ではありません。脳の働き方そのものに変化をもたらすものなのです。だからこそ、「気持ちの持ちよう」や「前向きに考える」といったアプローチだけでは根本的な改善が難しく、脳と身体に働きかける専門的なアプローチが必要になります。
大きな事件や事故といった「大トラウマ」でなくても、小トラウマの集積によってフラッシュバックは起きます。
日常的な、親からの否定的な言葉、見捨てられ体験、感情を無視される経験、安心できない環境――こうした「小さな傷つき」が積み重なることで、脳には大きな影響が残ります。そして本人も周囲も、これを「トラウマ」だと認識していないことが多いのです。
些細なきっかけで激しく怒ったり、泣いたり、暴れたりする――こうした癇癪(かんしゃく)のような行動の背景に、実はトラウマが隠れていることがあります。
周囲からは「感情のコントロールができない」「わがまま」と見られがちですが、実際には過去のトラウマが「今ここで起きている」ように感じられ、脳が危機反応を起こしているのです。
「自分の性格の問題」「努力が足りない」「甘えている」――そう思い込んで、一人で苦しんでいる方が少なくありません。その生きづらさは、あなたのせいではありません。
長い間、トラウマの治療といえば「トラウマ体験について話す」ことが中心でした。しかし、複雑性PTSDの場合、この方法には限界があることがわかってきました。
トラウマ記憶に触れることでかえって症状が悪化する場合がある。何度も辛い体験を語ることが再トラウマ化につながる可能性がある。そもそも「話せない」ほど深い傷である場合も多い。解離状態にある場合、通常の対話療法では届かない。
「トラウマを語らなければ治らない」――この思い込みが、多くの方を苦しめてきました。しかし近年、トラウマ治療の分野では新しいアプローチが生まれています。大切なのは、一つの方法に固執するのではなく、その方に合わせて効果的に組み合わせることです。
当オフィスでは、お一人お一人の状態に合わせて
4つのアプローチを組み合わせています。
NETは、トラウマ記憶を「人生の物語」として再構成していく方法です。複雑性PTSDの方の記憶は、しばしば断片的で時系列がバラバラになっています。辛い出来事が「今ここで起きている(ホット・メモリー)」ように感じられ、過去と現在の区別がつきにくくなっているのです。
NETでは、人生を時系列に沿ってトラウマに焦点をあて振り返り語り、語られた内容をカウンセラーが文章化し、読むことで記憶を冷ましていきます。ポジティブな出来事も含めて自分の人生の物語を作り、トラウマ体験を「過去の出来事」として位置づけ直していきます。
「トラウマを語らなければ治らない」――これは誤解です。杉山登志郎医師が開発したTSプロトコール(Traumatic Stress Protocol)は、身体へのアプローチを通じてトラウマを処理する方法です。
最大の特徴は、トラウマ体験を詳しく語る必要がないこと。身体への左右交互刺激と肩呼吸という、シンプルな手法のみで実施します。実施時間はわずか数分間。この短さが、負担軽減と安全性の高さにつながっています。
TSプロトコールの基本理念
トラウマは心ではなく「身体」に残っている。身体から安全に手放していく。必要最小限の説明で、短時間に実施する。
複雑性PTSDの方の多くに見られるのが、解離という状態です。解離とは、つらい体験から心を守るために、意識や記憶、感覚を切り離す心の働きです。「別の自分」が現れる、記憶が抜け落ちる、自分が自分でないような感覚――こうした解離は、決して「異常」ではありません。耐え難い体験を生き延びるための、心の創造的な適応なのです。
自我状態療法は、解離によって生まれた「さまざまな自分(自我状態)」と対話し、それぞれの状態を理解し、協力関係を築いていく方法です。「怖がっている子どもの自分」「怒っている自分」「守ろうとする自分」――それぞれの役割や気持ちを理解し、自我状態間のコミュニケーションを促進します。
トラウマを抱えている方の多くは、常に緊張状態にあります。いつも何かに警戒している、身体が固く力が抜けない、安心してリラックスすることができない。これは「過覚醒」と呼ばれる状態で、トラウマの典型的な症状の一つです。
この状態では感情が不安定になりやすく、些細なことで圧倒されてしまい、回復のための心理的作業に取り組む余裕がありません。だからこそ、まず安全に「リラックスできる」という体験を積み重ねることが、すべての土台となります。
大切なのは「どれか一つ」ではなく、その方に合わせて組み合わせることです。複雑性PTSDの状態はお一人お一人異なります。トラウマの種類や時期、解離の程度、現在の生活状況や安定性、持っているリソース(強み、サポート)、心身の状態や準備度――だからこそ、画一的な方法ではなく、その方の今の状態に最も適したアプローチを選び、組み合わせていくことが重要なのです。
まず自律訓練法でリラクゼーションを習得 → 安定してきたところでTSプロトコールで身体に残るトラウマ反応を処理 → 解離状態がある場合は自我状態療法で内面の協力関係を築く → さらに落ち着いてからNETで人生の物語を再構成
話すことが得意な方なのでNETから開始 → 途中で不安定になったらリラクゼーション法で安定を取り戻す → 言葉にならない部分はTSプロトコールで補完 → 「別の自分」が現れる場合は自我状態療法で理解
激しい感情の爆発(フラッシュバック)が頻繁にある → まずリラクゼーション法で自分を落ち着かせるスキルを習得 → TSプロトコールで身体の反応を処理 → 1クール後に自我状態療法を加え、それぞれの自我を整える
このように、決まった順序や方法はありません。カウンセリングの中で、状態を見ながら、一緒に最適な道筋を見つけていきます。
当オフィスでは、心理カウンセリングだけでなく、必要に応じてケースマネジメントも提供しています。複雑性PTSDの方の多くは、心理的な問題だけでなく、仕事や学業、家族関係の調整、法律的なサポート、医療機関との連携、福祉サービスの利用など、生活上のさまざまな困難も抱えています。
こうした現実的な問題にも、精神保健福祉士としての視点から、必要な社会資源につなげたり、関係機関と連携したりするサポートを行います。心の回復と、生活の立て直しを、両輪で支えていく――これが当オフィスの特徴です。
ここまで読んで、「自分にもできるだろうか」と不安に思われた方もいるかもしれません。大丈夫です。回復は、一気に起こるものではありません。小さな、ほんの小さな一歩から始まります。
今の生活で安全を感じられること。リラクゼーションを習得し、自分を落ち着かせられること。信頼できるサポートがあること。
自分のペースで、トラウマに向き合う。身体に残った反応を解放する。記憶を整理し、意味づけを変える。解離した自我状態との協力関係を築く。
新しい人間関係を築く。自分らしい生き方を見つける。人生に意味や目的を感じられるようになる。
このプロセスは、直線的ではありません。行きつ戻りつ、螺旋階段を登るように、少しずつ進んでいきます。
どんなに小さくても、それは確かな変化です。
回復は、劇的な変化ではなく、小さな「できた」の積み重ねです。
もし今、「もしかして自分も…」と思われたなら、それは大切な気づきです。「どうしたらいいかわからない」と感じているなら、それも自然なことです。
初回のご相談では、じっくりとお話を伺います。無理に話す必要はありません。ご自身のペースで、大丈夫です。
その生きづらさは、あなたのせいではありません。
トラウマは「脳の傷」であり、適切なアプローチで回復できます。
回復への道は、必ず開かれています。