どんぐり
アメリカの心理学者ジェイムズ・ヒルマンは
人間はそれぞれの運命、生き方のイメージのようなものがコード(暗号、記号)
として書き込まれた魂の器ないし計画書のようなものを持っている。
と考えこれを「どんぐり」と名付けました。
私はカウンセリングの目標のひとつに、ご相談者の「どんぐり」を見つけるサポートをさせていただくことと考えています。
「どんぐり」とはどのようなものか、ヒルマン教授の語るバイオリニストのユーディ・メニューインの例を紹介いたします。
『メニューインは4歳になる前に両親に連れられて コンサートマスターのルイス・パーシンガーが独奏を弾く場面を何度となく聴いていました。
ある日、いつものようにルイスの独奏を聴いている最中にメニューインは 「4歳の誕生日にバイオリンを買って欲しい。そして、ルイス・パーシンガーに弾き方をならいたい」と両親にねだりました。しばらくして、両親の友人の計らいで待望のバイオリンがメニューインの手に渡ったのです。
しかし、そのバイオリンは本体も弦も金属で出来ているオモチャでした。 メニューインはわっと泣き出し、バイオリンを床に投げつけ、それにはもう見向きもしませんでした。』魂のコード
このことがきっかけでメニューインは4歳からバイオリンを習い始め望み通りにルイスを師事するのです。
ここで注目したいのは、メニューインは4歳前にすで自分が何をなすべき人間であるかを知っていた、感じていたのです。
本能的に音楽を奏でることこそ、私が生きるということ
と、
そしてその思いが通らないと感じると現れる衝動「わっと泣き出し、オモチャのバイオリンを床に叩きつける」
この反抗的で意固地な行為こそが「どんぐり」の姿なのです。
多分、子育て中のお母様方はこの文章をお読みになると「あっ」と反応される方も多いのではないでしょうか。
「何この子、こんなことにムキなって」
「あなたには、まだ早いの、子どものうちはこれでいいのよ」
なんて台詞、最近口にしませんでしたか?
そうです、その瞬間こそがお子様の「どんぐり」に触れた瞬間かもしれません。
ヒルマンは言います「どんぐりは見られたがっている」と
また、「どんぐりを見失った人間は悪魔的になる」とも
「どんぐり」は自分のビジョンを明確に持ち、ビジョンに近づくためには反抗的で意固地になったり、 かんしゃく持ち・自暴自棄・無気力・暴力的、そして時には内気、内弁慶など色んな形でみられることを望んでいます。
カウンセリングを受けることは、そんな不可視の「どんぐり」の声に耳を傾け、
どんぐりの中の書き込まれたものを見いだすことと考えています。
皆様の御来所をお待ちしています。